一般の方へ

麻痺が改善、なぜ、どうすれば

麻痺の改善に必要なものは?

脳卒中や脊髄損傷による麻痺は大脳皮質から脊髄前角細胞までの神経路の損傷が原因ですから、麻痺を改善するには、この神経路の再建と強化が必要です。
MRIと損傷部位

神経路を再建・強化する方法は?

神経路の形成と強化には、強化したい神経路に興奮を繰り返し伝えることが必要です。 興奮を神経細胞から神経細胞に伝えるシナプスは、興奮を繰り返し伝わると強い結合になります。 これが神経路の強化です。
神経路と学習

効果的な麻痺改善の方法は?

麻痺を効果的に(改善度/治療時間)改善するためには、強化したい神経路(目標の神経路)へ繰り返し興奮を伝える工夫が必要です。 まず、損傷を受けた神経路のバランス(興奮水準)を整えるウオーミングアップ(経頭蓋磁気刺激や四肢への電気刺激、振動刺激、ボツリヌス療法など)」を行い、次に、患者が運動を始める時に目標の神経路を教える操作を行なうことが効果的です。

具体的な方法は?

(1) 目標の神経路を治療者が指定
患者は麻痺した手足を動かそうと努力して生じる様々な運動の中から目標の運動を探すこと、つまり、多くの「試行錯誤」の中で目標の神経路(運動)を探し出すことが求められます。 しかし、治療者が患者の運動開始時に目標の神経路を教える操作を行なえば、この「試行錯誤」を減らせます。
迷路の図
(a) 促通反復療法(Repetitive Facilitative Exercise): 治療者が「人差し指を伸ばして」など運動を指示すると同時に、促通操作を行って、患者が目標の運動を容易に実現し、それを100回づつ反復して、麻痺の改善を促進します。

※(1)~(3)にカーソルを合わせると、上の画像が変わります。

(b) 機能的電気刺激法:
電気刺激下の促通反復法
重度麻痺へ電気RFE
母指への促通反復療法に持続的電気刺激と振動刺激を併用。効果を高めるため、肩、肘、前腕への電気刺激も併用しています。
老健利用者(30分間 2回/週 12週間)での片麻痺改善の比較

この強力な治療を陳旧例(罹病期間:平均4年)へ短時間かつ低頻度で3カ月行うと、麻痺の改善が肩肘で66%、手指で44%に生じ、従来の治療より効果的です。

(c) 革新的ロボットでの訓練:
リーチングロボット

促通機能つきロボットは世界でも最先端のロボットです。

(i)促通機能(電気刺激二つ、振動刺激二つ)付きモーター能動免荷リーチングロボットです。課題は二つのスイッチ(手前:青色、上方:黄色)を交互に押すことです。患者さんは促通機能(電気刺激二つ、振動刺激二つ)によって楽に自動で上方へリーチング出来ますから、効果的な訓練となります。
(ii)ロボットの全体像と低い目標へのリーチンングと高い目標へのリーチングです。

(iii)促通機能(伸張反射、電気刺激、振動刺激)付き前腕回内・回外ロボットです。前腕の回外が改善すると手を胸や顎に近づけることが楽になり、回内が改善すると目標物に手を伸ばして掴むことが楽になります。

リーチングロボット2

促通機能(伸張反射、電気刺激、振動刺激)付き前腕回内・回外ロボットです。前腕の回外・回外が改善を促進する先端的なロボットです。

*(a)(b)(c)を併用することで、より効果的な治療となります。

(2) 再生医療 (損傷部への細胞の補充):
(a) 注入した幹細胞や神経幹細胞が損傷部の保護と損傷された神経路を再建して、麻痺を回復すると期待されています。
しかし、元通りに神経路を再建・強化するために、(a)(b)(c)の併用が必要になります。

慢性期の麻痺を改善するために

麻痺の回復は、脳の可塑性が大きい期間(脳卒中後6ヶ月以内)を過ぎると期待出来ないと考えられていましたが、その時期を過ぎても強力な治療を行えば麻痺は改善します。 促通反復療法に電気刺激や振動刺激、ロボット治療を組み合わせた治療法は強力な治療ですが、更に強度な治療法にする研究を進めています。 麻痺の改善を強く願っておられる方は、この治療法を受けられることを御薦めします。
6カ月の壁を破る強力な治療